文章作成作業において、毛筆筆耕・ぺン筆耕・PC入力…などのフレーズは、今では一般的に使われています。
「筆耕」という言葉は、昔々の「謄写版印刷」の用語として頻繁に使われていました。
約60年前、私は学生時代「謄写版印刷」の製版作業のアルバイトをしていました。
「謄写版印刷」とは、
1 和紙に蝋張りした「原紙」を、鉄板に賽の目を切り込み平板ヤスリ状にした「謄写版」にのっけて、キリのような「鉄筆」で字を切り込みます。つまり蝋原紙にヤスリで穴をあけて字を書いてゆきます・
2 その蝋原紙の上をインキをつけたローラを転がします。
3 下に置いた紙に穴点が線とな印刷される。
というシステムです。ナント…エジソンの発明ということでした。
主題に戻りまして「筆耕」という言葉は…ヤスリの上に蝋紙を置いて鉄筆で掘ってゆく作業「筆で耕す」、これを「筆耕」といっていました。当時この作業をする職人を「筆耕屋」と言いました。
またの名を「ガリ版屋」。ヤスリを鉄筆で引っ搔くのだから「ガリガリ!」。侮蔑的な言葉のようですが、お客様から原稿をお預かりして、忠実にきれいに仕上げる、という技術・修練は当然必要でした。
つまり、「筆耕」とは書道のように、芸術的作品を制作するものではなく、忠実に、お客様からのご依頼の原稿に元づいて見やすくきれいに仕上げるための作業です。
ここが書道毛筆とは根本的な違いとなります。但し、書道修練がないと「毛筆筆耕」修練はできないし、書道が出来ても筆耕の修練をしないと…毛筆筆耕はできません。
「筆耕の硯」のいわれなど、いろいろな語源があるといわれていますが、今言われている「筆耕」という言葉は、ここから来たのだと、私は思っております。
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